Let's Get Lost

僕に力をくれ、もっと強くなってみせるから

ありがとう、なんてまだ言わせない

もうだめかもしれないと思っていた、矢先のことだった。好きになって、ちょうど1年。もう一度、魅せられてしまった。
SEVENTEENの新曲について。

 


[MV] SEVENTEEN(세븐틴) _ THANKS(고맙다)

 

もともと飽きっぽい性格なのは自覚している。何かを長く続けることができた試しはない。

K-POPで一番最初に好きになったEXOへの熱は、そんなに長いこと持たなかった。もっともそれは、推しがレイに定まった頃には、彼がほぼ母国での活動に専念しつつあったからというのが大きい。Monster/Lucky One活動期がひと段落し、年が明けて彼がぱったりEXOにいられなくなってしまうと、中国での活動まで追うほどのバイタリティはなく、ちょうど入れ替わるように私の生活に入り込んできたのがセブンティーンだった。

初めは戸惑うことばかりだったアイドルオタクという職業(?)にも随分と慣れた頃だったこともあり、大学院を辞めて暇を持て余していたこともあり、EXOとは桁違いの熱量を彼らに注ぎ込んだ。香港公演で初めて一人で海外に行ったり、小説を書くようになったり、ツイッターを通じて知り合った人たちと遊びに行ったり、月並みな表現だけれど彼らのおかげで、ジュンのおかげで、私の世界は明るくなったのだ。

好きになって初めてのカムバックはDon't Wanna Cryだった。衝撃的だった。それまで私が見てきたセブンティーンとは全く違う姿をまざまざと見せつけられて、さらに虜になってしまった。一体これから先、どれだけ新しいものを見せてくれるのだろう、とどきどきした。けれどその一方で、ぐっと憂いを帯びた姿を目にして、今までのセブンティーンから抜け出そうとしていることに一抹の寂しさを覚えたのも事実だ。きっと同じように感じた人は多いことだろう。私が目を奪われた、きらきらと輝く純粋な青春の象徴たる彼らは、きっともう戻ってこないのだな、と。天真爛漫で鮮やかな少年性に惹かれた私のような人間にとって、彼らの変化はあまりにも急だったから、もう少し待って欲しかった。もう少し、その若くて青い夢を見せて欲しかった。

その寂しさは、その後セブンティーンプロジェクトとして新曲が次々と発表されるにつれて私の中で無視できない感覚になっていった。ジュンのことが、13人のことが好き。彼らの音楽も好き。なのに、その二つの「好き」はいつしか別々のものとして私の中に存在するようになった。Shining Diamondとか表情管理を聴く時に覚える感情と、Teen, Ageの収録曲を聴く時のそれとは、確かに言葉でくくればどちらも幸せなのだけど、確実に違うものだった。表情管理のイントロの、ピーンとはねるような音と一緒に感じる胸の高鳴りが、どうしようもなく恋しくてたまらなかった。当時の彼らにしか持ち得なかった若さ特有の泥臭さ、荒削りの輝きみたいなものは薄れて、彼らの纏う空気にどきりとするような影のある色香が濃くなっていくのが切なかった。

なんだか、随分と焦っているように見えた。早く大人にならなくては、と彼らが背伸びをしているような気がして、そのちぐはぐさには惹かれつつも、やっぱり無垢なままでいてほしいというファンのエゴが拭いきれなかった。

その感覚が大きくなっていくのと同時期に、ジノというボーカリストに出会ってしまった。次第にそちらに傾ける熱量が増えていくのを自覚して、どこかで諦めのようなものを感じた。ああ、またか、と思った。自分が飽きっぽいことは昔からわかっていたから。ただ、いっときはあれだけ心酔したものを、あっさり冷めてしまったと認めることも怖かった。ジュンが好き、というその一心でこの数ヶ月を生きてきたから、それがなくなったら、まるで心の拠り所がなくなってしまうかのような心許なさがあって、頑なに自分はまだ好きなのだと言い聞かせるようにやり過ごした。

でも、所詮「やり過ごしている」に過ぎないことは自分でもわかっていたから、苦しかった。好きじゃなくなった、というにはあまりにも好きで、でも前と同じではないことも確かだった。ジュンへの気持ちが宙吊りになったまま数ヶ月が過ぎて、セブンティーンは11月にまたカムバックをした。

Teen,Ageに収録された新譜はどれもめちゃくちゃにかっこよかった。好きだった。でもやっぱり、ティーンエイジというには随分と大人びていて、彼らを好きな気持ちと、彼らの音楽を好きな気持ちのあいだの隙間は埋まらないままだった。

もうだめかもしれない、という思いが強くなっていた頃に、彼らが再びカムバックするという話が上がった。これでだめだったら、そこまでだな。そんな思いがあったままだったから、楽しみと同じくらい不安を抱えたまま、5日の午後6時、私は携帯とイヤホンを持って会社のトイレにいた。

 

だめだった、やっぱり。でもその「だめ」は、私が覚悟していた「だめ」ではなかった。

笑っちゃうくらい、あっさりと。セブンティーンイヤーで醸成された翳りのある空気はそのままに、彼らは私の心をもう一度奪っていった。「彼らが好き」でもなく、「彼らの音楽が好き」でもなく、彼らが歌う彼らの音楽が好きだ、と久しぶりに思った。便座に座り込んだまましばらく立ち上がれず、震える手でもう一度再生ボタンを押しかけて、これ以上は泣いてしまうと踏みとどまった。

置いていかないで欲しかったんだ、と気がついた。年齢は私より若い彼らが、私よりもずっと大きな世界を見て、私よりもずっと先を見据えて歩いていて、その背中がどんどん遠くなっていくようで寂しかった。不安だった。私の知らない彼らになってしまうことが悲しかった。

何言ってんの、僕らはちゃんとここにいるでしょう。すっかり遠くなったとばかり思っていたのに、すぐ目の前で、彼らが柔らかく笑っている。そんな曲だと思う。

今までの彼らの曲を聴くたびに、溌剌とした彼らのパフォーマンスを観るたびに私の胸に押し寄せてきた波は、自分の学生時代を思い返すときと同じような、甘酸っぱい過去への憧れだった。もう二度と手にすることのできない、手をすりぬけてしまった煌めきへの郷愁。私はまだ過去の甘い夢に浸かったままでいたくて、それなのに彼らが見据えているのはいつだって未来で、私が感じていた隙間はそこにあったのだ。

ジュンの踊る姿に、ハッとした。ねえ、いつまで過去のおれを見てるの。
どんどんかっこよく美しく強くなっていくジュンが、私の好きになったジュンじゃなくなってしまったように思っていたのかもしれない。本当に、勝手な話だと思う。もうすぐ22になる青年はそれでもあどけなさを残したまま、今、私と同じ時間を生きているのに。

好きとか、可愛いとか、今まで飽きるほどに口にしてきた。
でも、一人で踊るジュンの姿を見て私を襲ったのは、この人が大事だ、という気持ちだった。誰かに対して、こんなに強く、こんな風に思ったのは初めてだ。それはもう、目が眩むほどに強烈だった。自分の中にこんなに強い感情が眠っていたことに驚いたくらいだ。

ありがとう、じゃないよ、ばか。
ここが一区切りだというなら、もういっかい最初から。君を大切に、大切にするよ、めまいがするほど。